こんにちは、コロナ環境に強い小説家です。
作家の友達と話すとみんな「いつもとおなじだから良くわからない」って言うんですが、ぼくはつらいです。
コロナのせいで仕事場がなくなり、新しく借りた仕事場が前に比べるとあまりに陰鬱で、本気で鬱になりそうなので6日で解約しました……10万くらいドブに捨てた気分です。ファミレスで仕事します……
そんなダウナーなぼくですが、今回もがんばってお悩みに答えます。
まずは長編完成おめでとうございます! というわけで、さっそく私も相談者さんの長編を読ませていただきました。だいたい原稿用紙二五〇枚くらいでしょうか。この枚数を書くのは、なかなかできることではないです。自分で誇って良いと思います。素晴らしい。技術的なことはこれからいくらでもうまくなります、
しかし……、
せっかく書き上げた長編なのに、こうした感想を抱いてしまうのは悲しいですよね。でも客観的に作品を見るこの姿勢から、もっとうまく書きたいという想いが伝わってきます。いいですね!
さっそく、小説におけるターゲットの定め方ですが、まずはこの本を読んでみてください。
『WEB作家でプロになる!: ①書籍化の方程式 (トークメーカー新書) 』
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これは「なろう」に参戦した現役のプロ作家たちの座談会本です。2017年の本ですが、基本的な戦略はそう変わらないと思います。ここで書かれている、本気で書籍化を目指すことを想定したときの条件が以下です。
(一)よほど腕に自信がある人でなければファンタジー
(二)一話を二〇〇〇文字以上〜五〇〇〇文字以内に仕上げたうえで、必ず一話ごとに面白いと思えるようにする
(三)毎日更新を最低一か月続ける
(四)書籍化を最終地点にするなら、大爆発(異常な人気)は要らないので、月間ランキング上から五つは最低読み込んんで、今の流行を体感する
(五)四の工程から一週間以内に新作を始める。それ以上あけば流行が変わって四の研究結果が無駄になる
今回の相談、「ターゲットの絞り方やターゲット層の定め方 」、を本気で考えると(四)が答えになります。
つまり、売れるものを書こうとするならば、まずは今現在の「環境」や「トレンド」を把握すべきなのです。
実際、「なろう」に参戦しているプロ作家の方は「環境」を把握した上で、王道や邪道の作品を作っています(TCGや格ゲーで言うTierとかメタとかですね)。
これはどんなことにも言えるのですが、「場」には流れがあって、それを無視してもなかなかヒットしません。
もし本気でターゲットから逆算して作品を作ろうとするなら、「環境」を把握せよ、というのがとりあえずの答えになります。
とはいえ、これを言って「わかりました! いますぐ研究して書きます!」というふうになる人はあまりいません。だいたいが「環境」ではなく、自分が書きたいものを優先します。それでもいいと思います。理想とする作家像は人それぞれなのです。ただ、たとえ趣味だとしても、自分の「書きたいもの」が一番ウケる環境を知っておいて損はないと思います。
相談者さんの、作品タグ、
「現代ファンタジー 恋愛 異世界 人外 百合 ダーク あやかし 和風ファンタジー 性描写あり GL 百合妊娠」
のなかの、異世界、あやかし、恋愛、和風ファンタジーあたりは王道人気なので、まずはこのジャンルの人気作を読み込んでみては?
もしここで勝負してみようかな、と思ったら、七割くらい寄せて、残り三割に他の要素を入れる――というのが具体的な戦略になると思います。
あとは、自分の作品に近いテーマの作品を見つけるのも良いと思います。
今回の長編には、「トラウマをかかえた思春期のティーンが心の傷を埋め合う」という、普遍的なテーマを感じました。このテーマだと、昔なら「フルーツバスケット」(ケモ要素もちょっとある)、なんかが近いかも。
小説・漫画・映画問わず、良い作品がいっぱいあるので、ぜひ参考までに読んで研究してみては?
最後に、実際に私自身がどうやって書いているかを紹介します。
ちょうど先日、東京新聞から8枚くらいの短い掌編を依頼されました。このとき、まず考えたのが「環境」です。
「東京新聞の読者層だから40代以上の男性がメインかな? そうすると主人公は50代くらいが良いのだろうか……。今の状況を踏まえるとやはりコロナのことを書きたい」
新聞には小説のランキングなどはないので、ある意味で自由ですが、ここで書く意味のあるものにはしたいと思いました。
コロナ環境、個人的な家庭内の悩み、思春期、感染症、失われたもの、見えないものに怯えている、見えないもの……感情? 哲学ゾンビ? 恋愛? 社会性、最近の政治……。
とりとめないですね。しかし、このあたりで「主人公が、あらかじめ失われたなにかとともに生きる話」という漠然としたテーマをつかんだので、書き始めることに。
結果的に何度かなおして、書き終えたのがこちらです。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/culture/culture_news/CK2020042502000264.html
50代男性というのがなんだかしっくりこなかったので、途中で変更しました。
参考までに読んでみてください。
ちなみにこれはあくまで掌編で、長編の場合はさらに多くの要素が必要になるのは言うまでもありません(北沢さんの場合、「サブプロット」について勉強すると、よりよい長編が書けると思います。参考までにこちらを)。
今回は全体的にマーケティングぽい話になりましたが、小説を書き始めたばかりの人は、アクセルを全開にして、読者のことも考えず、自分の思うまま書きたいものを全部盛って書くべきだと思っています。
まずは書くことを楽しんでください!
人の評価はそのあとで良いと思います。
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