コラム column

vol.11

Q. ネタが枯渇してきました

海猫沢 めろん

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日本中がコロナで大変ですが、みなさんいかがお過ごしでしょうか。
ぼくはいつもどおり部屋にいるのでコロナとは無縁ですが、むしろ感染してヤフー個人とかに体験記を書いたらすごいアクセスで金が……。
などと物騒なことを考えてます。
おとなしく部屋で仕事します。
さて今回の相談です。

今月の相談者:えふえふさん(38歳)
執筆歴:4年弱
ご相談内容:書きたいもの、書けるものがもう無くなってきています。
短編コンテスト向けの作品を2週間に1本程度書き続けてきたのですが、頭の中が枯渇してきているのが自分でも分かるくらいになってきました。
「そんな状態なら書くのやめたら?」という説もあるのですが、簡単に筆を置いたりはしたくないとも思っています。
こういうときは何をすべきなのでしょうか。

問題を切り分けるためのチャート

書きたいもの、書けるものがもう無くなってきています――という危機感……あるいは枯渇状態。
小説をある程度書いているとこの壁にぶち当たりますよね。

まず、心のなかでもやもやしている問題をクリアにして、切り分けましょう
この図を見てください。

これはぼくが昔作ったもので、小説が行き詰まるときのパターンを自己分析して、心理と解決法を書いたチャートです。
見るとわかる通り、作品を作る上での問題は、多くの場合、「自分か作品」どちらかに問題があります
解決法は「自分と作品に向き合う」ことです(これができない――あるいはメンタルの深い部分が傷ついているとき、ライターズブロックに突入します。その対処法は以前書いているのでご参考までに)。

ご相談内容を見てみると、短編を「2週間に1本程度」書いていたというのは、良いペースだと思います。

書けない人のための休憩のとり方

アウトプットが多くなると必然的に精神的枯渇状態に陥りがちです。
こういうときの解決法は3つです。

1)アウトプットを抑える
小説のペースを落として、一作に時間をかけてみる。

2)インプットを増やす
他のジャンルの作品を鑑賞したり、興味のある人の話を聞きに行ったりする。

3)これまでにないアウトプットを行う
別のアウトプットを行うというのも良いです。

未開拓のジャンルを描いてみると、あんがい新鮮で良い刺激になります。自分がこれまでやっていなかったり、興味がないことにこそ新しい可能性が眠っているのです。

こうしたインプットとアウトプットを繰り返しながら、「自分が本当に好きなものは何なのか」ということを、分類整理して突き詰めて考えてみてください。そうすると自分が好きなものの「型」や「パターン」が見えてきます。それを抽象化して自分のなかに持っておくと、不思議なことに自分のことが見えてきます。
掘り下げの作業をすることで作品の質があがったり、量も増えたりする可能性があります。

アイデアを出すための技術を磨く

枯渇状態のときに、「でもまだ書いてみたい」という気力があるなら、まだ試していない方法を試すチャンスです。チャートで言うと、下の方の「アイデア出し×5を思い出す」という部分ですね。
アイデアを出すための基本的なパターンは主に5つと言われています。すなわち、

・裏返す
・拡大縮小
・ひねる
・連想
・組み合わせ

です。わかりやすくカレーライスで例えると、

・裏返す→カレーパン(中身をカレーにする)
・拡大縮小→大盛り、小盛り
・ひねる→スープカレー、スパイスカレー
・連想→タンドリーチキン 福神漬け
・組み合わせ→カツカレー

まず題材をひとつ据えて、そこからこの方法で拡張していくとアイデアが出しやすいです。これは小説の内容や形式、あらゆることに使えますが、ちょっと大雑把でもあります。具体的に短編を書くという目的があるならば、ここは王道、ショートショートの帝王である星新一先生にならうのはどうでしょう?
星新一先生はエクセルなどの表の縦と横に単語を書いて、ひたすら機械的に組み合わせて、それでしっくりきたものを書くという方法を採っていたことが知られています。これはぼくもやってみたことがありますが、かなり実戦に使えます。

江坂遊著『小さな物語のつくり方』は星新一先生の弟子の方の本ですが、ショートショートの書き方やアイデア出し方法が書かれているので読んでみるのも良いと思います。

余談ですが、以前、「アイデアのスランプがない!」と断言する人と会ったことがあるんですが、その人曰く、「アイデアがなくなったら、ドンキに行って、とにかく最初に目に入ったものを題材になにかを作ったりするんですよ」だそうです。
チャンス・オペレーションと言われている手法で、これも面白いですね(この人はメディアアーティストの宇川直宏さんで、DOMMUNEというストリーミング番組を企画してます)。

内面を掘り下げ、新しいものと出会うことで次の段階へ!

アイデアについては内面掘り下げるのが一番強い派と、外側の新しいものと出会え派がいますが、どっちも真実なので、両方やりましょう

ともかく行き詰まりそうなときにやるべきことは、作品レベルなら、文体を変えてみる、物語の形式に凝ってみる、ジャンルを変える、キャラクターを変える……無限にあります。
しかし、頭でそれも理解していて、そうじゃないなにか……なにをやっても自分のなかでしっくりこないな……と感じ始めているのだとしたら、「掘り下げ」の作業をしてみるのが良いと思います。
「量」(枚数や作品数)を書いていると、おのずと次に「質」(クオリティや内容)が気になる段階がやってくるものです。

これをきっかけに、より深い創作領域に入ることを応援しております!

*

「生き延びるためのめろんそーだん」では読者の皆様からのご相談を募集しています。
応募方法は簡単。こちらのフォームに記入するだけ。
Web小説を発表している方は、お悩みとあわせて作品も読んで回答します。お悩みお待ちしております。

めろん先生の新刊出てます

追記:こんにちは、monokaki編集部の碇本です。
本連載を担当してもらっている海猫沢めろん先生の新刊二冊が発売中です。
というわけで、こちら。

『キッズファイヤー・ドットコム』講談社(講談社文庫)
著者:海猫沢めろん
内容紹介:いつも通り歌舞伎町から帰った白鳥神威を待ち受けていたのは、見知らぬ赤ちゃんだった。「前向き病」ともいわれるカリスマホストは即座に自分で育てることを決意。「子育てにもあふれるこの才能、レジェンドすぎる」。しかし客にも新人ホストにも不評。窮地に陥った男は、天才的なひらめきによる革命的なアイデアを思いついた!
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000320286

『キッズファイヤー・ドットコム(3)』講談社(ヤンマガKCスペシャル)
原作:海猫沢めろん 漫画・漫画原作:川口幸範
内容紹介:新宿歌舞伎町『BLUE†BLOOD』二代目店長・白鳥神威は自他ともに認める歌舞伎町NO.1カリスマホスト。誰かに託された見知らぬ赤ちゃんを育て始めた神威は、孔明と共に子育てサイト「キッズファイヤー・ドットコム」を立ち上げる。孔明による炎上戦略のおかげ(?)で話題の的になるが、神威の本当の目的は、日本社会を動かす壮大なものだった! 
愛はお金に、赤ちゃんは皆のものに! 歌舞伎町カリスマ育児ロード、賛否両論の最終巻!
https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000338576

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