コラム column

第6の森

Twitter小説のことをもっと語ってみる

編集 マツダ

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知ってるようで意外に知らない、思ってるより意外に深い。あなたの知らないWeb小説の世界をお届けする「Web小説の森」。
前回の記事にたくさんの反響をいただいた中でこんなご意見があった。

「創作の種がTwitterにある」というのはとても納得する節がありました。
Twitterに挙げられるイラストや漫画、
所謂「嘘松」と称される創作めいた話まで・・・
思い当たる節があり、興味深いです。

ただ、
漫画やイラスト、短歌、嘘松等で有名な人は幾人か疎い私でも思いつきます。
(クマのケーキ屋であるとか、画集を出されたアボカド6さん、米粉さん等)

ただTwitter小説・・・と聞いて有名な人は思いつきません。
白石一文先生が書いた「翼」(鉄筆文庫)はTwitter発、と聞いたことがありますが、それは限られた文字数の上で連続性をもたせて書いたものだったと・・・思います。

もう一歩踏み込んで、具体的なユーザーさんを取り上げてほしかったです。

Twitter小説についてもっと掘り下げたいと思っていたので、今回はこのご意見にお答えしていきたいと思う。

嘘松とは――Twitter小説文化

いただいたご意見の「嘘松」についてまず説明したいと思う。
Twitterの1ツイートで実話風のちょっといいエピソードを投稿し、リツイートやいいねの伸びを狙うものだ。
よくあるのは「マックで女子高生が…」「電車で男子高校生が…」という目撃譚。マナーの悪い人間、傍若無人な態度を取るおじさんなどを横目で見て、チャラい女子高生や若い学生が正論をズバリと言い、周囲の人間が拍手喝采するというもので、読むとちょっとスッキリする構造となっている。中には実話もあるのかもしれないが、ほぼ創作だと思われる。
実話風だけどしょせん創作でしょ、と揶揄して呼ぶのが「嘘松」だ。

しかしながら、140字で絶妙に「イライラするがなかなか面と向かって立ち向かえない相手」を配置し、その相手よりも社会的に弱者の立場から「完全論破する正論」を言わせる小咄というのは、なかなか簡単に書けるものではない。これらには読者が普段からうっすら感じている社会的な抑圧を跳ね返すパワーがあり、そのパワーによってリツイートやいいねをしたくなる。
BL系の「嘘松」も多い。電車の中やマックでいちゃいちゃしていた男子高校生を描いたものなどだ。
電車、マックが赤の他人をぼんやり観察できる場であり、一触即発のトラブルが起こり得る場所だということがよくわかる。

ご質問では「嘘松」と「Twitter小説」を明確に切り離されているが、私は「嘘松」も「Twitter小説」と呼びたい。よくできた「嘘松」は1ツイートの中に明確に起承転結がある。
マックの女子高生がマナーの悪いおじさんを論破する話は、勧善懲悪ものの基本構造に則っている。水戸黄門、桃太郎、必殺仕事人……どれも「権力のある悪人」が「弱者に傍若無人なふるまいをし」、「直接被害は受けていない、一見して社会的弱者」が見事に成敗する。その成敗を、更なる第三者である一般庶民が賞賛する(=周囲の拍手)。
日本人の気持ちいいツボを押さえているのがこうした勧善懲悪ものであり、その構造を押さえて人気が出る物語が「小説」と言わずして何だろうか。「嘘松」はなかなかバカにできない。Twitter小説を書いてみたいぜという人はぜひ、いい嘘松を書いて私に教えてください。

他にもTwitterで行われる創作のタネはたくさんある。
140字の中で落差を起こすことを狙ったもの、「いっけなーい!遅刻遅刻!」から始まって予想もつかない展開を見せるもの。個人的には「黒塗りの高級車」シリーズが好きです。

Twitterからの書籍化デビュー事例

さて、そんな創作のタネがごろごろしているTwitterだが、Twitter小説で有名になった人はいるのか。
前回取り上げた「スクショ小説」で有名になった方はちょっと思い当たらない(知ってる人がいたら教えてください)が、140字に収めたツイートが小説になっていく形で有名になった人ならゴロゴロいる。

ひとつのネタだけで有名になるのは当然なかなか難しいが、バズツイートをいくつか生み出したのちに、文才が目に留まって書籍化する、あるいはバズツイートの後に長編化してそれが書籍化、などの例はたくさんある。

まず『横浜駅SF』(KADOKAWA)。
小説投稿サイト「カクヨム」のローンチとともに爆発的な人気を得て書籍化したため、元がツイートだと知っている人は少ないのではないだろうか
最初はこのツイートがきっかけだった。


このツイートの後、作者が連続ツイートで横浜駅が自己増殖する物語を書き始め、人気が出たのでまとめてカクヨムに投稿、書籍化……という流れで生まれたコンテンツだ。
作者の柞刈湯葉氏のツイートは不思議な味わいがあり、先ほど書いた「マックの女子高生」についてもこんなツイートをしている。

思わず読みたくなる設定で、この一文だけで世界観が広がっていく。

他には、日常を切り取ったツイート群が絶妙で書籍化の声がかかり、現在は作家として活躍されている燃え殻氏。

恋愛にまつわる、短いながらも鋭い言葉を発信して爆発的な人気を得て、書籍化された0号室氏。

他、ツイートで人気が出て書き下ろし小説『真夜中乙女戦争』を上梓したF氏、ツイートからコラム、小説へと徐々に活躍の場を広げたダ・ヴィンチ恐山(品田遊)氏など枚挙にいとまがない。

これらをすべてTwitter小説と呼ぶかといえば、そう呼べないものもあるだろう。ポエムと小説の中間地点に位置するようなツイート。世界をどう切り取って140字にするか、その切り口で人々を魅了し続けている。

Twitter小説をコレクションしよう

「長い文章が読めないからポエムか、まったく今の若い子は、けしからん」と思う向きもあるかもしれないが、古くは俳句や短歌、もう少し新しくなると銀色夏生氏の本など、瑞々しい感性を武器として世界に切り込む短い文章は、いつの時代でも人々に求められている
簡単に見えるがかなりソリッドで、誰にでも書ける文章ではない。
このような文章が小説の中に一文、二文……五文もあればかなり胸をドキッとさせる小説に仕上がるだろう。Twitterで有名になった作家がその後小説を上梓してうまくいくのも、もともとの言葉のセンス、物事の切り取り方に長けているからだと思われる。

ついだらだらと書いてしまいがちなあなた――私自身もだらだら書いてしまいがちだし、だらだらにはだらだらの良さがあるので一概には言えないが――ひとネタの爆発力が勝負になるTwitterで、バズツイートを生み出せるかどうかチャレンジしてみるのもいい訓練になるだろう。
まあ、訓練で上手になるものでもなさそうで、才能がものを言うジャンルではあると思うが……しかし文章を削ぎ落す練習には絶対になる

お気に入りのTwitter小説やポエム、あるいはどちらにも当てはまらないお気に入りのつぶやきでもいい。フォローするなりいいねをつけたりアーカイブするなりしてコレクションすることをお勧めする。自分のもやもやした気持ちを的確に言ってくれる言葉にたくさん出会うことで、必ず人生が豊かになるだろう。

嘘松からポエムまで、たった140字でこれだけのことができる、ということをお伝えしたくて今回のコラムを書いた。
Twitterの文字数制限によって研ぎ澄まされた文章の数々。
何気なく見えるツイートでも、いかに凄いかを少しでも味わっていただければ幸いである。そして凄いものが評判になり、大きく羽ばたいていることを私は喜ばしく思っている。

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