創作ハウツー howto

四軒目

辞めたいと思った心の動きすら、創作の糧になる

黒澤 広尚

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「創作居酒屋」そこは編集者・作家・書店員・漫画家・イラストレーター・サイト運営者・読者など分け隔てなく、書籍業界にかかわる人々が集まり、創作論を語り合う居酒屋である。

どうも皆様お疲れ様です。黒澤です。
今回で4回目になりましたが、コロナ禍による自粛要請の中、オンライン飲み会という形でお話を聞かせていただきました。早速ゲストのご紹介をいたします。

■今回の来客
忍丸 様(『異世界おもてなしご飯』『わが家は幽世の貸本屋さん』『古都鎌倉あやかし喫茶で会いましょう』『化け神さん家のお嫁ごはん』)

時流に合ったテーマを「私らしさ」が伝わるようにアレンジする

――どうもお疲れ様です。今回のインタビューは『マイクロマガジン社コンテスト』と『monokaki』とのタイアップということで、忍丸さんがデビューしたときのことももちろんなのですが、デビューした後のことなども『わが家は幽世の貸本屋さん』を中心に聞かせてくださいませ。まずは忍丸さんの自己紹介を兼ねまして、これまで書籍化された作品について教えてください

忍丸:よろしくお願いします。Web小説投稿サイトに掲載を始めたのが3年前くらいなのですが、2017年にカドカワBOOKSで『異世界おもてなしご飯』という作品でデビューしました。その後、2019年にマイクロマガジン社ことのは文庫『わが家は幽世の貸本屋さん』と一二三文庫『古都鎌倉、あやかし喫茶で会いましょう』を出させていただき、2020年にスターツ出版『化け神さん家のお嫁ごはん』を出させていただいています。 実績としては以上、4作品になりますね。

――1作品デビューするだけでも大変なのに、4作品も出されている方はなかなかいないですよね。最初の『異世界おもてなしご飯』に続いて2作目で、『わが家は幽世の貸本屋さん』を書こうと思ったきっかけはどういったところでしょうか?

忍丸:私は、昔からあやかしが大好きでした。小さい頃、実家にたまたまあった水木しげる先生の妖怪図鑑にはまったのがきっかけで、妖怪ものを貪るように読みました。自分で小説を書くようになった時、いつかはあやかしものを……と考えていました。
デビュー作がひと段落した頃、あやかし×お仕事もののキャラ文芸が流行り始めていたので、作品の傾向を考える時に参考にしました。いつも作品を作る時は、時流に合ったテーマを取り入れつつ「私らしさ」が伝わるようにアレンジしています。貸本屋さんで言えば、登場するのはあくまで「あやかし」であり、人間とは考え方や価値観が同じにならないようにしています。

面白いものはその理由を、つまらないものはその原因を考察する

――そもそもの質問になってしまうのですが、忍丸さんが投稿サイトに投稿しようと思ったきっかけを聞かせてください

忍丸:妊娠中、切迫流産でお医者様から一歩も動くなと厳命されてしまい、時間を持て余していたので……。学生の頃からずっと創作はしていたのですが、結婚を機に離れていたのが再燃した感じです。

――エブリスタでも妊娠や出産を機に執筆活動を再開される方は多い気がします。ただ実際に主婦業と執筆の両立について難しい部分も多いと思うのですが、そちらを教えていただけないでしょうか

忍丸:幼い子どもの世話や家事をしながらの創作になるので、集中できる時間がとても短く、ほとんど自由になる時間はありません。なので、年中無休で隙間時間に執筆しています。それが大変なところですね。

――特に商業という締切がある中で、お子様を育てられながらの活動はかなり忍耐力と精神力のいる活動だと思いますが、モチベーションの原動力などあれば教えていただけないでしょうか?

忍丸:週末は必ずお酒を飲みます(笑)。行き詰まったら、子どもを夫に預けて近くのスーパー銭湯へ……など、確実にストレスが発散できる方法を持っています。ストレスが溜まると、自然とモチベーションが下がりますから。

――今もお酒を飲んでストレスを発散するなどといったお話を伺いましたが、創作のためにスキル面で続けていることがあれば教えてくださいませ

忍丸:興味の向いたものは、漫画、小説、ゲーム、ドラマ、映画、ドキュメンタリー……なんでも見てみることにしています。面白かったものはその理由を、つまらないと思ったものはその原因を、必ず頭の中で解析するのが癖になっています。小説もライトノベルばかりじゃなく、一般文芸など幅広く読んでいます。むしろ、そっちの方が読書量は多いですね。

――忍丸さんのように長く続けられる方はたくさんインプットされていることが多いですよね。最近特に創作に役立った・面白かった作品などはありますでしょうか?

忍丸:面白かった作品といえば、直近では凪良ゆう先生の「私の美しい庭」でしょうか。文体が本当に美しく、登場人物の心理がダイレクトに伝わってきて……私の理想にとても近い作品でした。基本的には、商業的に成功している作品は読むことにしています。売れた理由がなにかしらあるはずなので、それを考察するのが楽しいです。

作品を継続して刊行していくためには、研究・考察・実行が大事

――忍丸さんは『異世界おもてなしご飯』と『わが家は幽世の貸本屋さん』で小説のコミカライズも経験されていますが、コミカライズ原作の時の作業はどういったものがあるでしょうか?

忍丸:ネームやプロットの確認、原作との矛盾の指摘、キャラクターに合わせた台詞の修正などです。世界で3番目くらいに原稿が見られます。とても楽しいですが、見落としがあると大変なことになるので、いつも時間をかけてチェックをしています。

――初めてコミカライズが決まった時は皆様自分のキャラクターがマンガになるということで感動する方が多いイメージですが、しっかり分けてチェックされているんですね

忍丸:もちろん、原作者として楽しんではいます。ただ、漫画家さんをはじめ、多くの方が携わっていて、浮かれてばかりはいられないって感じでしょうか。コミカライズは小説よりも多くの人の目につくので、できれば最高の状態でお披露目したいですし。ただ、チェックの際のコメントは浮かれていたりします(笑)この表情でご飯三杯食べられます、とか(苦笑)。

――さて、『monokaki』はその名の通り物書きのためのサービスということもありましてこちらの質問なのですが、忍丸さんがデビューして一番驚いたところはどういったところでしょうか?

忍丸:売れること、続刊すること、重版すること自体がものすごく大変だなあ! と(笑)
結果が出るまで創作を辞めないことも大変でしたが、実際にデビューしてみると、その先は更に厳しい茨の道が待っているのだなあとしみじみ思いました。

――デビューはゴールのように受け取られがちですが(実際ひとつのゴールでもありますが)スタートラインでもありますからね。特に昨今は小説投稿サイトの発展で、良くも悪くも応募・デビューの敷居が下がった分、継続することの難しさも感じますね

忍丸:初めは、私もなにも考えていませんでしたが、継続して作品を刊行していくためには、研究・考察・実行が大事だなと感じています。自分は決して天才タイプではないので、創作への情熱を保ちつつ、「自分が書けるもの」をいかに世間のニーズと合致させるかというのは、永遠のテーマですね。

――これは『2作目以降に大切』というよりも『デビュー前に知っておいた方がいいこと』でもありますよね。感性だけでデビューや次のタイトルが続々書籍化できるかというと、なかなか難しい部分があるとは思います

辞めたいと思った心の動きすら、創作の糧になる

――ここからはコラボインタビューということで『マイクロマガジン社コンテスト』に応募の方むけの質問をさせてくださいませ。マイクロマガジン社の編集の方と打ち合わせや発売に向けたやり取りをしていかがでしたか?

忍丸:ことのは文庫の編集さんは、いつも的確な指摘をくれるのでとても助かっています。感性が合うのか、指摘部分になるほど~と思うところが多いのが嬉しいところです。担当編集さんのおかげで、物語が二倍にも三倍にも魅力的になったと思っています。編集さんありきの作品ですね。本当に……。

――ことのは文庫さんはかなり編集に力を入れられていますよね。原稿の良さをいかすだけではなく、発売前のホームページでの告知やSNSを使ったレビュー紹介など、かなりアクティブに動かれている印象があります

忍丸:作品の魅力を活かして、色々と仕掛けてくれるので本当にありがたいと思っています。毎月、多くの作品が世に出て行く現状で、プロモーションの重要さを再認識しましたね……。創刊タイトルW重版は快挙ではないでしょうか。
それに、マイクロマガジン社のWeb班は半端ないですよ~! 是非、貸本屋さんの特設HPやことのは文庫のHPを見ていただきたいです。動画まであるんですよ……! 営業さんもとても素敵な方で、貸本屋さんの感想を熱く語ってくれて。ああ、作品を愛してくれているって感じでした。

――ありがとうございます。実際に私も担当編集の方とはよくお話をするのですが、本当に作品に対して熱量を込められているなと感じました。忍丸さんは『わが家は幽世の貸本屋さん』で、文庫小説だけではなく、コミックELMOからのコミカライズも決まっておりますので、マイクロマガジン社コンテストに応募される方は参考にしてくださいませ。
さて、そろそろいいお時間になってまいりました。最後に、作家を目指される方へ一言お願いいたしてよろしいでしょうか?

忍丸:創作というものは、本当に出口が見えなくて、ふとした瞬間に迷ってしまうものだと思います。辞めたい、自分に才能はない……と思ったことはありませんか? 私は何度も思いました。実際に筆を置いたこともあります。私は、これまで20年以上創作をしているのですが、その間、何度も挫折を味わいました。

元々、私自身は漫画家を目指していたのですが、長期のスランプに陥ったり、担当編集さんと連絡がつかなくなったりと……あまり思い出したくないことも多いです(笑)。
今は、絵から文字に武器を変え、初めて筆を持った頃と変わらぬ熱量で創作に臨んでいます。
人生色々ありました。貸本屋さんをはじめ、私の作品にはこれまでの人生が反映されていると思います。長い人生、全部が創作の糧です。創作を始めた頃には書けないものが、今は書けているはず。辞めたいと思った心の動きすら、創作の糧になっています

今はなにも見えなくても、パッと先が開けることがあります。創作のコツは継続です。一緒に頑張っていきましょう!

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