創作ハウツー howto

vol.3

こだわらず手放せ! 作家・久美沙織に教わる創作5ヶ条

monokaki編集部

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 ものを書くことの初心者・スタートに立つための情報をお届けする「ものかき未満」。今回は、3月24日にエブリスタが高校生向けに開催したワークショップ「Be Open, Let go! おはなしをつくろう」に参加してきました。講師である小説家・久美沙織氏から伝授された「創作のための5か条」を、monokaki向け特別編集版としてお届けします。
 「おはなし」を書いたことのある人なら誰でも心当たりがあるような、あるいは「おはなし」を書こうとして挫折したことのある人なら誰でもぎくりとするようなエッセンスが満載です。

その1 自分ではない「ひと/ もの」に出会い触れる機会をつくる

 ワークショップでは、生徒の皆さんにカードに書かれた様々な「キャラクター」になりきって、スクリーンに移された様々な動画や写真のシチュエーションに立ってもらいました。自分以外のキャラクターとしていろんなことに触れた高校生たち。登場人物をつくって”その人”にふさわしい感じ方・ものの見方をしてみると、自分の感じ方とは違った反応が起きてきます。「Openな状態になっていると、何かが降ってくるようなことがあるんです」と久美さん。そのための脳のストレッチとして、「東京23区内に住んでいる人だったら、今まで行ったことのないの他の区に行ってみてください」という具体的な方法も教えてくれました。

  • 「渋谷の忠犬ハチ公」「成績トップで一回も二位になったことがない中学生」など、カードに書かれた属性になりきっておはなしを考えます。

「どの土地に住んでいる人にも、”気軽に行こうと思えば行けるんだけど知らない場所”が絶対にあるはずです。さらに”なんの興味も持っていない場所”だとより良いです。時間に余裕があれば朝から行って一日をそこで過ごし、学校・病院・建物などを観察して、その場所で生まれ育ったことをイメージしてください。女の子だったら、男の子に生まれたイメージを持つとさらに良いです。ここで生まれていたらきっとこの小学校に通って、自分はどう育ったのか……」

「人間はやったことがないことをすると、緊張して疲れます。一方で、見知らぬ土地でも一日過ごすとそこに馴染みますし、歩ける範囲で移動するだけでも発見があります。普段の生活と近い部分、まったく違う部分も見つけることができます。使えるクレヨンの色が一色増えるように、それが『新しい武器』になるのです」

その2 おはなしに大事件はなくてもいい 普段の出来事を書いていい

  • 「ばか」「だめ」などの言葉のお題や、「田園風景」や「街並み」の写真のお題などを見ながら、自分のカードのキャラクターのおはなしを考えます。

 ワークショップでは、高校生たちにカードに書かれた属性(キャラクター)から物語をつくってもらいました。すると、どこか事件っぽいもの、とんでもない運命に翻弄されるおはなしのアイデアが次々出てきます。しかし、久美さんはそんな高校生にこう語りかけました。

「私もデビュー当時は、おはなしというものは、すごく”とんでもないこと”がないと書けない気がしていました。人が死んでしまう、大失恋してしまう、友達が妊娠してしまう……驚天動地がないと書けないと思っていたんです。でも、実際にはほとんどの人が驚天動地は経験していないからこそ、書きやすい。逆に、普段のことを書くのはとても難しいです。何もない一日の朝から夜まで起きたことを書くのは本当に難しいことなんです」
 どこが面白いのか自分ではわからないので、日常的なことを題材にするのは勇気が要りますよね。しかし、「実は、それでも十分面白いんです」と久美さんは再度強調します。

「むしろ、あまりにあたりまえで見落としていることを見つけて、すくいあげて、さしだすことができるほうがずっと素敵です。『ああ、これ、わかる。わたしもそう思ってた』と、共感してもらえる。架空の登場人物を、自分のように、ともだちのように、思えたら、読んで良かったとおもいます」

  • 視覚だけではなく、聴覚や嗅覚も使います。ブローチについている香りを嗅いで、カードに書かれたキャラクターがどう感じるのかを考えます。

「先ほど『見知らぬ街を歩くと、最初は疲れるけど一日過ごすと馴染んでくる』と言いました。自分自身をつくっているのは、実は自分で気にしていない無意識の部分がほとんど。自分にとってはいつもと変わらないように見える今日でも、まったく違う立場の人からすると、面白く見えるかもしれないのです」

その3 おはなしは「書かれていないものでできている」と意識する

 続いて、小説とそれ以外のジャンルの違いについてへと、話はどんどん展開していきます。小説が、アニメやゲームよりもハードルが高いのは、それまで読書経験を積んでいないと、どう読むのかがわからない点があるから。

  • この画像は、観覧者の有志に目隠ししてもらい、高校生参加者にスクリーンに映った情景を「目の見えないひと」にも伝わるよう説明することにトライしてもらっているところです。

「たとえば、『ばか』とセリフに書かれていたら、読者はその『ばか』からいろんな意味合いを感じながら読みます。組み上げられてきたおはなしから、『ばか』に画像や音声を妄想しながら足して読んでいくのが読書という行為です。日本語では、書かれている内容とそこにある意味内容が少なからずズレることがあります」

「子どもがお父さんに『いってらっしゃい』と言うとき、『私も一緒に行きたい』気持ちで言うのか。『私はお父さんに行ってほしくない』気持ちで言うのか。その言葉がその時にどういう意味で使われているのか読むことで、おはなしの読み方も変わってくるのです。書く側もその部分を仕掛けていくと面白いものが書けるようになっていきます」

その4 「なぜ小説なのか」を考え抜く

「なぜおはなしを書くの?……この問いについて、もっと考えてみてください。なぜ小説なんでしょうか。自分の中にあるものを伝える手段はいろいろあります。皆さんが小説を書こうとするときに使えるのは活字だけですよね。絵が書けたら漫画ができるし、俳優さんやカメラが使えるのならばシナリオを書いてみるのもいい。ほかの手段でやれることだってあります」

「アニメやゲームなど、圧倒的な情報量をもつメディアと小説が戦おうと思ったら、ゆっくりゆっくり読ませること、何度も読んでもらうことでしか、勝ちようがないんです」
 目で見て、一目瞭然でわかることを文字にして伝えるのはとても難しいことです。「それをわざわざ文章でやろうとするのは、本当に言葉の力を信じてないとできないし、上手く言葉だけで説明しきれるようにしなければなりません」という久美さんの言葉に、高校たちも真剣に聴き入っていました。

その5 こだわらないで、手放す

 ワークショップのタイトルについての言及がありました。「Be openって何だろう? openって何を開けるんだと思う? Let go!をどう訳す? Let’s Go やLet it goとどこが違うかわかる?」問いかけに戸惑う参加者たち。「ひらけ?」「……いけ?」と自信なさげな声。久美さんが黒板のそれぞれの英語の隣に「こだわらない」「手放す」と書いた瞬間、会場から納得したような、意外なような声がいくつか漏れました。

「これは、私の大好きな先生の教えです。森永光子先生という方にフラダンスをならっていました。何年やってもなかなかうまくなれませんが、ほんとうにたくさんのことを教わりました。自分の殻をこじあけて、素直にひとの忠告を受け入れる。知らなかったもの、あたらしいものにこわがらず手をのばす。いらないものは手放す」

「できない理由とか言い訳とか、へんなプライドや羞恥心はサヨナラです。これは踊りだけではなく上手になりたいこと何についても言えることだと思います。若いうちは、ひとの話を聞きたくなかったり、理由なくとにかく反抗したかったりするときもあるかもしれない。でも、いまより少しでもうまくやりたいなら、よくなりたいなら、学べるものは、あなたがたのすぐそばに、たくさんあるのです

自分の中にできたおはなしの魂を、周りの誰かに受け止めてもらえるぐらいにまで育てたら、外に出してみましょう。あんまりいい加減なまま外に出してしまうと迷子になってしまいますが」というメッセージには、ぎくりとする物書き志望の方もいるかもしれません。「自分をすべて出し切って空っぽにしてから、Openにいろんなものを受け取るというやりかたもあるはずです。まず最初は、誰かに『こういうことをやりたい』『これが面白いと思うんだけど』と相談してください」

「小説を書くには、他の人にわかるような文章を書かないといけませんし、その積み重ねによって、作品がとても面白く・感動的なものになります。『スター・ウォーズ』や『ハリー・ポッター』など、世界中の多くのお客さんに『この話の中に入りたい』と思わせるような力のある作品でさえも、最初の最初は誰かの頭の中にあった妄想なのですから

 ”小さなもの”をまず書いてみて、それからみんなを巻き込んでいくというはじまりは、どんな大作でもすべて同じ。「Be open, Let go! おはなしをつくろう」で学んだ創作のポイントは、小説の本質について考えさせられるものでした。

高校生たちの学びから、大人も原点に戻ろう

 会場では、高校生たちの生き生きとした様子が印象的でした。キャラクターカードが配られておはなしをつくるとき、考えたおはなしをワークシートに書く前に、みな次々に発言していました。「自分の中で完璧にできたおはなしでないと伝えられない」ではなく、「パッと浮かんだアイディアを、まずは伝えてみようとする」。その能動的なアクションによって、会場中が創作への熱意に満ちていたと思います。ワークショップを終えた高校生たちのとても爽やかな表情は、新しい創作の仕方に真剣に向き合ったことを表していました。

 今回、高校生たちが学んだ内容には、全世代が学ぶべき作家・久美沙織の創作の極意が詰まっていました!
 創作に悩んでいる人も、これからはじめたい人も、一度「おはなしをつくる」原点に還ってみませんか? 自分以外の人の反応を考えてみる。普段の出来事を書く。書かれていないことを意識する。なぜ小説なのか問う。そして、こだわりを軽やかに手放す。みなさんも、5ヶ条を創作に生かしてみてください。


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