小説レビュー review

vol.1

「口の中がわーいわーい♥」する骨太BL

ハマモ

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みなさんこんにちは。エブリスタにてボーイズラブ作品のライセンスアウト(出版社さまとやりとりをし、世間に出していくお手伝い)を担当しているハマモです。

この度、webで読めるBL小説を紹介する連載をもつことになりました。地方の女子校に通い、仲間たちとBL作品に没頭した思春期。つらい授業は妄想で乗り切りました。
そんな私がこのような機会をいただけるなんて、中二の私が聞いたらそれはもうびっくりして踊り狂うと思います。
いたらないところもあると思いますが、作品の素晴らしさは本物!なので、おつきあいいただけますと嬉しいです。

口の中がわーいわーい!ギャップがすばらしい骨太BL

作品名:緑土なす
作者:みやしろちうこ
URL:https://novel18.syosetu.com/n7955i/

山奥で野人のように暮らしていた”足弱”は、生まれて初めて上京した都で、千年続く王朝の最後の王である今世王レシェイヌの庶子の”兄上さま”だと発見され、宮殿に保護される。国土に緑をもたらす奇跡の力を持つ王族は、血族しか愛せない宿命。
しかし、十数年前の流行病により、今や生き残っているのは今世王レシェイヌただひとりだった。

あ、難しそうだと思いましたね!?ファンタジーものって「面白そうだけど難しそう」って避けがちだと思います。私もそうです。カタカナの名前なんてあんまり覚えられないし、ハードル高いですよね。でも、そんな人にこそこの作品は読んでほしいんです。重厚な情景描写に骨太な物語。そう思って読み進めていると、途中からお?と思うような表現がちらほら現れてきます。

「陛下!口直しです」

援軍が寝台に前進してきた。
今世王は口を開けて甘いとろみの蜜を待った。待てずに匙に飛びついた。
死にそうだった舌が、わーいわーいと喜んでいるのがわかる。小さな餅を包んだ餡子を噛み締めて嚥下すると、喉がきゃっほう!といっているのがわかった。

とっても苦いものを飲んだ時の攻めの心情描写です。荘厳な物語展開、シリアスなシーンの連続の中に、不意にこのようなふわふわ文章が挟み込まれてきます。スケールの大きな物語の中でも、これはBLなんだ、萌えていいんだと再確認させられる最高の緩急と言えます。

辛いものを食べた後に、甘いものを食べたくなるのが人間というもの。
荘厳→萌えふわふわ→荘厳→萌えふわふわの無限ループを繰り返した結果、いつのまにか書籍にして四六判の上下巻(合計800P)に相当するボリュームを読み終わってしまう、恐ろしい作品です。
ツイッターを検索したら「夢中で一気読みした…」とつぶやいている人を何人も見かけました。中毒性がすごい(私もその一人です)。

個人小説サイト出身の大傑作

作品名:空に響くは竜の歌声
作者:飯田実樹
URL:http://www.ggbox-bl.com/

不思議な声に呼ばれ、気を失った守屋龍聖は見知らぬ場所で目を覚ます。
そこは竜が空を飛びかい、竜王が治める異世界の国エルマーンだった。古からの契約により、竜王の妃として生きなければならない…そう告げられ、戸惑う龍聖の前に、深紅の髪の竜王フェイワンが現れる。

アラサー以上のBL愛好家の方々の中には、「個人小説サイト」と聞くと心のやわらかい場所を刺激されてしまう人も多いのではないでしょうか
小説投稿サイトの運営をしている身からこんなことを言うのもなんなのですが、お気に入りの「個人サイトBL」を発掘し、友達とシェアしあっていたノスタルジックな思い出は忘れがたいものがあります。
小説投稿サイトが興る前、小説書きたちは自分の創作の場所を求め、各人でサイトを立ち上げていました。
twitter等のSNSもまだありませんから、人を呼び込むためにはとにかく口コミ。友達のサイトとの相互リンクやランキング登録を利用して、自らのサイトをPRしていました。

そんな個人サイトから生まれたヒットシリーズがこちらです。連載されていたのは、今から10年以上前の2004年~2005年。2016年に、10年以上の時を超えて書籍化されました。
竜王に捧げられる一族に生まれた主人公龍聖が異世界トリップし、戸惑いながらも竜族の住む世界について知っていきます。
こちらは現在5冊シリーズ刊行されており、何代もの「龍聖」の物語が読めます。竜王たちの宿命、様々な時代の日本から異世界に行った「龍聖」たちの文化的違い等、読みどころがたくさんあります。

重厚な物語でのデビューはweb発が有利?

2016年夏、エブリスタでは、出版社さんごとに決めた推しジャンルに合わせて投稿を募るコンテスト「天下分け目のBL合戦夏の陣/秋の陣」を企画しました。
そのとき、投稿者さんから「この設定で、ハッピーエンドで、Hアリで……こういう限られた条件の作品でしかデビューできないんですか?」と質問が寄せられました。
すべての書籍に言えることですが、流行りのジャンルや売れ筋というものは確実に存在していますし、商業として成り立たせるためにはそこをクリアすることもある程度必要となってきます。
今回紹介した2つの作品は、設定が独特で重厚で、「流行のジャンル」に則っているというわけではありません。

では、なぜこの2作は書籍化されたのでしょうか。2作を発掘し、書籍化を担当した編集者さんはこうおっしゃっていました。

「まずはストーリーがとても面白く、萌えのある作品で、商業作品に肩を並べられるクオリティであること。その上で、webで多くの読者を集めるほどに人気だというのが見えていたことが、企画を通すのに有利に働きました」

もし、「商業を目指したいけれど、私の作品はこのジャンルだと応募できるところがない」と作品を温めている方がいらっしゃいましたら、まずはwebにアップしてみてはいかがでしょうか?
自分では思ってもみなかったようなところからブレイクスルーが起こるかもしれません。

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