小説レビュー review

vol.5

カテゴライズできない小説から革命を始めよう

海猫沢 めろん

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俺です! めろんです! 人間です!  
いきなりだけど、みんな早起きしてますか?
俺は最近六時に起き始めました。朝起きると気分がいい。
執筆は朝が一番はかどるという人もいるので、小説を書いてる人は早起きしたほうがいい

まあ、朝食を食べて一時間後にはまた寝てるんですけど!
二度寝最高。

さて、Web小説定点観測もついに五回目になりました!
毎回2〜3作品、かれこれ10作以上の作品をとりあげてきたことになりますが、紹介していない作品も含めるとけっこうな量読んでます。
しかし読んでも読んでも氷山の一角……まったく読み尽くせる気がしませんね。

今回紹介する2作は、大まかにジャンル分けするとBLと架空戦記??
カテゴライズできない不思議な作品。特に後者は執筆スタイルが……。
さっそく行きましょう。

一人の人間を深く掘り下げていく

作品名:熊本くんの本棚
作者:キタハラ
URL:https://kakuyomu.jp/works/11773540548854714930

顔よし、からだよし、性格良し。そのうえ読書家。なんだか現実味のないイケメン、熊本くん。仲のよい「わたし」は、同級生から熊本くんの噂を聞く。
どうやら熊本くんが、ゲイ向けアダルトビデオに出演している、というのだ。

あらすじから分かる通り、熊本くんという一人の男子をめぐる小説です。
「ゲイ向けアダルトビデオ」、というキーワードからBLを予測したのですが、読んでいくと主人公の女性と、秘密のある男性の友情を描いた作品でした。
かなり連載が進んでいるせいもあるんですが、記号的ではなくて、深く一人の人間を掘り下げようとしているのがわかります。
最初は友達として、そして秘密を知るにしたがって、どんどん謎めいていく熊本くん。
「わたし」の抱える過去と悩み。いろいろなテーマが入っています。

タイトルにもなっているように「本」がところどころで出てくるんですが、そのチョイスがすごくいい
まず冒頭、

 大学の同級生だった熊本くんの本棚には、カミュだの三島由紀夫だのナボコフがあり、そして隅の方にジュネ、ワイルド、テネシー・ウィリアムズに森茉莉が並んでいた。

第二部の、

同級生に借りた『創竜伝』と『とある魔術の禁書目録』も読み終わってしまった。あまりに暇すぎて、頭がぼんやりしているせいで、次になにを読むかまったく思いつかない。僕は入学時に貰ったけれど、まったく授業で使わない国語便覧を開いた。一ページごとに作家の顔と紹介が載っているベージをぱらぱらめくった。作家の顔というのはなんでどいつもこいつも偉そうというか、さも難しいことを考えています、という顔をしているんだろうか。江戸川乱歩でも読んでみようかな、太宰治は何冊か読んだな、ととくに気にとめることなくめくっていたとき、あるページに目が止まった。この作家の名前に聞き覚えがあった。でも、どこで聞いたのか、忘れた。次に読むのはこれにしよう、と僕はメモをとった。

などなど、作家名を並べただけで、その時代やパーソナリティがかなりわかります
細かい日常の描写センスも素晴らしくて、

何度目かの赤信号になった。マリオカートの格好に扮した一団がやってくる。このあたりではよく見る。熊本くんが、彼らを目で追うのが見えた。気づかれるかもしれない、と思ったが、そのまま熊本くんはスマホに顔を戻した。

とか。さりげないけど新鮮です。
マリカー、確かに東京だと道路でよく見かける!
第二部は熊本くんの書いた自伝的な小説『さよなら、けだもの流星群』なのですが、このタイトルも謎です。
ますます熊本くんがわからない……。
読んでいて漫画家の西炯子さんの初期作品を思い出しました(めっちゃ好きだったんだよなあー)。

あと、セクシャルマイノリティを扱った作品は執筆者の思想が露骨に反映されてしまいますので、このあたりのジャンルを書く人たちは気をつけましょう(たまに炎上しているのを見かけるので……)。

続いての作品に行きましょう。

Wikipediaだよりでも小説は書ける

作品名:Nの怪文書
作者:淡波
URL:https://ncode.syosetu.com/n3348er/

九日新次郎の通う海軍兵学校には、Nと呼ばれる男がいる。
Nの存在は、世界の趨勢をどう変えていくのか。

舞台は大正11年、主人公である九日新次郎は海軍兵学校を卒業する。
しかし、学校では「N」という謎の人物が書いた怪文書が出回っていた。

それにはただ年表が書いてあるだけだったが、それが怪文書たる所以は、それが未来のことについて書いてある点だった。

果たして「N」とは何者なのか? 一体なんのために?
とりあえず歴史改変ものとしてドキドキしながら読みました。
スマートフォンという文字列が出てきたときには「おっ」となりました。

作者の方曰く

文章は殆どWikipediaだよりで書いています……。浅学ですがお付き合いいただけると幸いです。

とのことですが、いや! いいんですよ!!!
ある意味でここに可能性を感じます。
音楽がサンプリングやリミックスで作られるのが珍しくないのだから、小説も同じようにフリーで使える素材を組み合わせて作り上げてもいいじゃないか! と常々思っていたのでこれは非常に面白いと思います。
ぶっちゃけこのジャンルに詳しくないので、読んでいてもどこがWikipediaだよりで、どこが創作なのかわからなかったんで、むしろ全部を完全にカットアンドペーストで全部作り上げたとしても、それが面白ければ(著作権違反じゃなければ……)OK!
バロウズのカットアップはおもしろくないけど、おもしろいカットアップもできるはずだ!

Wikiを使いつつ、さらに物語を遠いところまでもっていってください!

……以上、今回もなかなか自分では読まないような小説を読ませていただきました。
これは人気のないカテゴリーだから……と思わずに「このジャンルを一番にしてやる!」という勢いで頑張ってほしい! 革命は君からはじめろ!!!!!


というわけで、このコーナーでは、

・書籍化されていない
・とにかくなんだか気になる
・これは来そう/絶対来ない、けどヤバい

そんなWeb小説を紹介したいと思います。
これを読んでくれ! という作品があれば、自薦他薦は問いませんのでお知らせください。ひっそり読みます!(読んでます)

「Web小説定点観測」は毎月第3火曜日に更新です。
ではまた。

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