小説レビュー review

vol.7

「パーティ追放もの」Web小説が持つ普遍性

海猫沢 めろん

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日本全国が猛暑に襲われている夏、いかがお過ごしでしょうか。
学生のみなさんは夏休みでしょうか? 夏休みといえばクーラーの効いた部屋で読書とゲームとアニメとマンガとインターネット! 外に出たら死ぬので夏休みは家の中で過ごしましょう! インドア派のリア充ぶりを見せつけてやるのです! 家族に!
太陽が出ているあいだは絶対に家から出ないぞ、という強い心を持ちましょう。

さて、今回は前回の最後に予告した通り、最近「なろう」で人気のテンプレである「リストラ系」を紹介します。
「なろう」を代表するテンプレといえば「異世界、チート、転生」ですが、最近はパーティーからリストラされた主人公たちの物語というのが注目されているという情報が。
今回はそんなトレンドに沿った物語をいくつか紹介しましょう。まずはこれ、

もはやリストラではなくNTR

R15> <15歳未満の方は移動してください。

作品名:<落下耐性:Lv999>しか持っていない最大Lv99の魔法使い、恋人が俺の代わりに勇者パーティーの一員になったので、追放された俺は前から気になっていた『世界の大淵』に身を投げました(のプロローグ)
作者:マッツィーニ
URL:https://ncode.syosetu.com/n7546ew/

<落下耐性:Lv999>しか持っていない勇者パーティーの魔法使いは、努力していまだ誰も到達したことのない最大Lv99まで上げることに成功したが、特殊なスキルを持っていないため役立たずだと追放される(自分の代人は、恋人)。 
失意を胸に『世界の大淵』に身を投げると、底には銀髪のエルフと黒龍がいて。 
『上限解放の実』、『レベル上げの実』、『クラス上げの実』、『異次元の編み草→マジックバックへ』、『遠い昔に落ちて死んだ冒険者が持っていた宝具』、『銀髪のエルフ』などを携えてザマァをする(予定)!―――のプロローグです。

まだプロローグしかない作品なんですが、パーティーからリストラされて……という話を知ったときに想像した物語にかなり近かったので紹介します。
ちなみに、あらすじはタイトルでだいたい説明されています
リストラ系の話って「ババアは必要ない」「無能なやつはいらない」「レベルが低い」とか、ひどい台詞を一行でさらっと流して展開するんですが、この作品では……

「そういうわけで、ルインさんとはパーティーを組むことが出来ません。 わたしは、マルス様と一緒に冒険をすることにしたんです」
 マリーは座っているマルスの背後に行き、後ろからマルスに抱きついた。
 そして自らマルスと濃厚な口づけを始めた。
 マリーの目にはもう、俺の姿など映っていない。
 俺の前で見せつけるかのように舌を絡めあう2人。

完全にNTR(寝取られ)です! リストラっていうかNTRです!
でも、確かにぼくが想像してたのはこういう展開です!
嫌過ぎる……この嫌さをひっくり返す展開があるのか? それともひたすら嫌な展開が続くのか……。
穴に落ちたあとの展開もなかなか読ませるので、プロローグの先をお願いします。

次、もうちょっとマイルドな方面のものも紹介しておきましょう。

パーティーから追い出された錬金術師が出会ったもの

作品名:世界最強の錬金術師~勇者パーティーを追放された時代遅れの錬金術師は、実は最強だったようです~
作者:風鈴弘太
URL:https://ncode.syosetu.com/n1682ew/

「おまえはもう用済みだ。錬金術なんて時代遅れの能力、僕達には必要ない。邪魔なんだよ」
 勇者や他のパーティーメンバーに心ない言葉を浴びせられ、エリンは勇者のパーティーを追放される。失意に暮れ、打ちひしがれる青年。だが彼は、行く先々で運命的な出会いをすることになる。
 これは、ある一人の青年が本当の仲間を見つけ、やがては世界最高の錬金術師と呼ばれるまでの物語。

これまた内容がタイトルでだいたいわかりますが、ちょっとひねりが効いています。
というのも、パーティーから追い出されたあとで、主人公が出会うのがこちら。

「そう怖がらないでください。私は戦闘用ではありません。分析と解析、そして計算を担当する機体です。あなたに危害を与えるつもりはないです。なんといっても、命の恩人ですから」
 アンドロイドに命があるのなら。そう彼女は続ける。
「命の…… 恩人?」
「ええ。先ほどの怪物。あれは私では倒すことができませんでした」
「いや…… でもアンドロイドなら……」
「あなた方が【古代兵器】とひとくくりにしても、きちんと個体差はあります」
「だから…… 戦えなかった?」
「ええ。……そういえば、自己紹介がまだでしたね。私は個体識別番号【U-Na7Δ5396】です」
「……長いな」
「ええ。ですから『ユーナ』とでも呼んでください」

そう、美少女アンドロイドと出会うんですね錬金術師&アンドロイド、絵になる!
さらに「第十話 火竜との戦闘 【後編】」で新たに仲間になるメンバーもなかなか魅力的です。
まだ十話ちょっとなので追いかけるのも楽。
あんまり鬱展開が好きじゃない人にもおすすめできます。

最後に、さらにマイルドなやつを。

スローライフ系小説という癒し

作品名:勇者パーティーで回復役だった僕は、田舎村で治療院を開きます
作者:空 水城
URL:https://kakuyomu.jp/works/1177354054885281336

長きに渡り、魔王軍と戦いを続ける勇者マリン。
そのパーティーで回復役を務めている青年ノンは、無詠唱で回復魔法を使える『応急師』としてそれなりに活躍していた。
しかしある日、新たに仲間となった『聖女』に代わり、勇者パーティーを解雇されてしまう。
聖女の回復魔法はノンに比べて圧倒的な回復力を誇っていたのだ。
パーティーを追放されて途方に暮れた彼は、田舎村に引っ込んで治療院を開くことを決意する。

勇者パーティー時代のことなんか忘れて、静かでのんびりとした暮らしをしたい。
これからは戦いや面倒事にも巻き込まれずに、田舎村で悠々自適なスローライフを満喫するぞ!
……ですから、治療とは関係のない依頼はご遠慮ください。そんなお話です。

こちら、リストラからのスローライフ系小説です。
主人公は、地味ながらかつて勇者パーティーで活躍していただけあって腕は確か。
田舎で開いた治療院で、のんびりと暮らす予定が、思わぬ来訪者のせいで思わぬ方向へ――。

 「アタシが所属している盗賊団を助けてほしいんス」
 「…………はい?」
 これまた聞き間違いだろうか。自分の耳を疑ってしまう。
 あまりに突拍子もない依頼内容を聞いて、僕は一瞬だけ固まってしまった。
 もう一度どうぞ。
 「ですから、アタシが情報係として所属している女盗賊団を、未知の呪いから救ってほしいんス」
 「…………えぇ~とぉ」
 理解に苦しんだ僕は、こめかみに手を当てて確認をとる。
 「ごめん、もう一度聞くけど、プランが所属している、なに団だっけ?」
 「盗賊団ッス」

ここからどんどん話が転がっていき、最後まで一気に読ませます。
全102話で完結してるんですが、最初からラスボスとのバトルまで癒し系のほんわかムードなので、心をざわざわさせたくない人も安心して読めます。

というわけで今回はリストラ系3作品を紹介してみました。

リストラ系が流行るのは読者もサラリーマンだからなのか? と思いましたが、読んでみると面白い作品はどれも古くからある作品のように、普遍性を備えているものばかりでした。

古典で言うなら、傷ついた人間が生まれ変わってやりなおすというモチーフは「レ・ミゼラブル」、裏切りからの復讐といえば「モンテ・クリスト伯」が有名です。
面白さの「芯」となる部分さえしっかりしていれば、時代や舞台を変えても面白さ自体は色あせないものです。

時代性と普遍性、このふたつの要素がうまく配分するのが面白さのコツです
が――個人的にはそんなものを無視したぶっ飛んだ作品も好きなんで、できるだけランキング外の熱量の高い作品を発見していきたいと思います。


……というような感じで、このコーナーでは、

・書籍化されていない
・とにかくなんだか気になる
・これは来そう/絶対来ない、けどヤバい

そんなWeb小説を紹介したいと思います。
これを読んでくれ! という作品があれば、自薦他薦は問いませんのでお知らせください。ひっそり読みます!(読んでます)

「Web小説定点観測」は毎月第3火曜日に更新です。
ではまた。

追記 ここで紹介した小説の作者の方からTwitterのほうにリプライがくることがあり、とても嬉しいです。ぜひ、みなさん作品を書き続けてください! ひっそり見守っております。

 謎の読書実況ユーチューバー「文豪さん」の「5分で読める読書実況」最新動画が更新されているみたいです。
執筆の合間にどうぞ。

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